スマホでも3Dグラフィクスを使ったゲームが一般的になってきました。
特に、FPS(First Person shooter)と呼ばれるプレイヤー視点で遊べる「PUBG MOBILE」や「荒野行動」などのゲームの多くが3Dグラフィックスを多用しています。
また、パソコンにもグラフィックボードやビデオカードと呼ばれるGPUの、Nvidia「GeForce」やAMD「Radeon」などと異なり、スマホでは「SoC」に組み込まれているためあまり詳しくは知られていません。
ということで、今回はスマホのGPUの性能やメーカー、快適にゲームをする上でのGPUの選び方などを徹底解説していきます。
スマホのGPUとは?
GPUとは、「Graphics Processing Unit」の略で、ゲームなどの3Dグラフィックスの処理などを担います。
アプリの対応によっては、動画のエンコードやデコードや、スクロールの描写などの処理でも力を発揮するので、スマホでもパソコンでも担う役割は殆ど同じです。
しかし、スマホに搭載されるGPUは、パソコンと異なりCPUやDSPなどの各種演算装置とセットなった「SoC」(System-on-a-chip)に内蔵されているため、単体での販売や利用は現時点ではできません。
イメージとしては、intelのCPUに内蔵されている「Intel HD Graphics」やIntel Iris Graphics]に近いですね。
そのため、スマホにおいては単体のGPUというのが存在しないことで知名度が低くなってしまっています。
スマホのGPUとCPUの違いは?
スマホに限らずGPUは、CPU(Central Processing Unit)とは異なった特性と役割を担っています。
CPUがOSからアプリまで汎用的にあらゆる複雑な命令をこなせるのに対して、GPUは3Dグラフィックスなどの膨大かつ比較的簡単な命令を処理することに特化。
その役割の違いから、CPUは複雑な命令をこなすための大きな回路が必要でたくさんのコアを搭載できません。
一方、GPUは、比較的簡単な命令を処理小さい回路を大量にコアを搭載することができ、膨大なデータ処理を可能にしています。
また、CPUも近年では、ヘテロジニアス化(役割の異なるCPUコアを載せること)することで、低消費電力性能に優れた小さなCPUコアを搭載するのがスマホでは当たり前になっています。
そうなると、低消費電力性能に優れた小さなCPUコアを大量に載せれば処理速度も速くなると考えられますが、CPUの場合アプリの対応やキャッシュの容量、帯域の問題から1コアの性能を下げた極端な多コア化すのが難しいのが現状です。
スマホのGPU性能と比較
スマホのGPUの性能は、スマホの登場時に比べると何百倍にもなったお陰で3Dグラフィックスを多用したFPSゲームなども快適に利用で切るようになりました。
CS機と比べててみるとSnapdragon865などのフラグシップ「SoC」に搭載されるGPUの単精度浮動小数点演算性能が、1250GFLOPS以上、対してPS3に搭載されるCELLが218GFLOPS、RSXが224GFLOPSですので単純に比較すると3倍以上の性能になっています。
勿論、プラットフォームやキャッシュやメモリの帯域が異なるので単純に描写能力を測ることは出来ませんが、アプリやサービスだけじゃなくハードも恐ろしく進化しているのがわかりますね。
ちなみに、PS4は、1.84TFLOPSとされています。
また、数値的なベンチマークスコアに関してはスマホのベンチマークを閲覧くださいませ。
スマホのGPUメーカー
スマホのGPUは、「SoC」に内蔵されているので、「SoC」と含めて現在のGPUを紹介していきます。
現在、「SoC」に内蔵されるGPUは以下の4メーカーになります。
- Qualcomm「Adreo」
- Apple「独自コアGPU」
- ARM「Mali」
- イマジネーションテクノロジーズ「Power VR」
また、「SoC」の開発とGPUの開発を一社で完結している垂直統合タイプとGPUコアのIPを提供する水平分業タイプに分かれますので、その辺りも解説していきます。
Qualcommが開発しSnapdragonに採用される「Adreno」
Qualcommが開発、販売している「SoC」Snapdragonに搭載されているGPUが「Adreno」です。
他社の「SoC」に提供されることはなくSnapdragonにしか搭載されない垂直統合タイプとなっています。
「Adreno」は、ATI Technologies(現在AMD)がモバイル用に開発したGPUですが、ブロードコムに渡り最終的にQualcommに買取、現在に至るまでQualcommが開発しているGPUです。
その性能の高さは、間違いなくトップクラスで、Snapdragonのシェアの高さと相まってゲームなどでは最も最適化されているため3Dグラフィックスを多用するゲームで遊ぶAndroidユーザーには最もおすすめのGPUといえるでしょう。
また、国内市場では中華系のコスパの高いスマホを除き殆どのスマホにSnapdragonが搭載されているので、Qualcommの急速充電規格「QuickCharge」なども普及しています。
Appleが開発しAシリーズ採用される「独自コアGPU」
Appleが開発しiPhoneに搭載される「SoC」Aシリーズに組み込まれれるGPUは個別の名称は現在ありません。
しかし、性能は高くAndroidと違い単一プラットフォームの環境も相まってゲームなどの性能は非常に優れています。
この独自のGPUは、iPhone8やiPhoneXで搭載された「A11 Bionic」から組み込まれており、それより以前の「SoC」では、イマジネーションテクノロジーズの「Power VR」が搭載されていました。
ARMが開発しSoCメーカーに提供される「Mali」
CPUで有名なARMが開発しているGPUが「Mali」です。
QualcommやAppleと異なりARMは独自で「SoC」を開発していないため、IPを提供するビジネスモデルを採用しています。
そのため、GPUの「Mali」は、CPUと同様にMediaTekの「Helio」やHuaweiの子会社HiSiliconが開発する「Kirin」、Samsungの「Exynos」などの「SoC」に採用されています。
性能は「Adreno」と比べるとやや低くく、最適化も含めて3Dグラフィックスを重視したゲームでゴリゴリに遊びたい人にはあまりおすすめできません。
Imagination Technologiesが開発しメーカーに提供される「Power VR」
イマジネーションテクノロジーズのGPU「Power VR」は、ARMと同様のビジネスモデルでIPを提供する水平分業タイプになります。
現在スマホ向けのGPUとして「Power VR」は、MediaTekの一部の「SoC」にしか採用されておらず先行きが不透明です。
スマホの黎明期はiPhoneやSamsungの「Exynos」にも採用され「Adreno」と争うほどの勢いと性能がありましたが、Appleが独自でGPUコアを開発するようになったり、ARM「Mali」の攻勢で現在はジリ貧です。
撤退してしまったNvidiaの「Tegra」
少し前に撤退してしまったのが、パソコンのGPUで有名なNvidiaの「Tegra」。
撤退間近の採用例では、Google「Nexus 9」やGoogle「Pixel C」がありますが、これらのデバイスもそれほど売れず採用も広がらずに遂にスマホからは完全撤退となってしまいました。
スマホの黎明期にモバイル市場に参入したNvidiaですが、GPUメーカーなのにGPU性能が低かったり、爆熱仕様だったりする「SoC」を出してたので失敗してしまいましたね。
スマホのGPUの選び方
一口にQualcommの「Adreno」といってもSoC毎に性能が異なるため用途からGPU性能を考える場合、「SoC」を見ていく必要があります。
「SoC」の性能は、[スマホのベンチマークスコア]のAntutuベンチマークの総合スコアとGPUスコアを見て頂けると参考になると思います。
それでは、GPUの側面からみた用途別のおすすめ「SoC」を紹介していきます。
3Dグラフィックスを多用するゲームをするなら「Snapdragon855」や「A13 Bionic」以上
3Dグラフィックスを多用するFPSゲームなどをする場合、Androidスマホなら「Snapdragon 855」や「Snapdragon865」、iPhoneなら「A13 Bionic」以降の「SoC」を搭載しているスマホがおすすめです。
「Snapdragon 855」は、Xperia 1以外にもGalaxy S10やAQUOS R3など多くのフラグシップ機で採用されているため選択肢も豊富ですしAndroid系では最適化や性能の高さから鉄板の選択肢となるでしょう。
ゲームはそこそこならならミドルレンジ以上の「SoC」
ゲームにそこまで拘りのない人や3Dグラフィクスを多用するFPSなどのゲームをあまりしない人は、ミドルレンジに該当する「SoC」を搭載するスマホを選びましょう!
具体的には、ベンチマークテストAntutuで160,000ポイント以上のスコアを出しているスマホがおすすめです。
具体的には、「Snapdragon 660」以降のSoCであれば現在でも多くの場合快適にスマホを利用することができるでしょう!
ゲームを殆どしない人はCPU性能だけみよう!
ゲームを殆どしない場合は、GPUを気にせずCPU性能だけみましょう!
チャットやSNS、YouTubeなどしか使わない人でも「Geekbench 5」でシングルコアスコア350、マルチコアスコア1,300以上であればそこそこ快適に利用できます。
スマホのGPUまとめ
スマホのGPUは、パソコンの世界と違い単独でのGPUがないので「SoC」毎で見ていく必要がありますね。
フラグシップ「SoC」とミドルレンジやローエンドの「SoC」を比べるとGPUの場合、CPU以上に差があります。
その他にも最適化の問題もあるので、FPSなどの3Dグラフィックスゲームをメインに考える場合、AndroidはSnapdragonの800シリーズを中心にベンチマークテストなどを見た上で購入しましょう!