左右同時伝送や専用コンパニオンアプリ以上に完全ワイヤレスイヤホンのトレンドとなっている「ノイズキャンセリング」。
当初、ハイエンドモデルしか対応していなかったものの、最近は10,000円以下のモデルでも採用されるようになったことで、購入のハードルは下がっています。
しかし、隆盛期の人気ジャンルだけに粗悪品が混じってくることも…。
そのため、購入の参考になるように「ノイズキャンセリング」の仕組みや種類を徹底解説していきます。
実際に使ってレビューしたモデルの中から抽出しています。
「ノイズキャンセリング」とは?
「ノイズキャンセリング」は、飛行機や車などのリスニングに関係ない雑音を鼓膜に届けなくする技術。
具体的には、イヤホンやヘッドホンのマイクとスピーカーを使い騒音と逆位相の音を発生させ打ち消します。
実際、「ノイズキャンセリング」を搭載したイヤホンを利用すると外部の音がかなり軽減され、音楽などの視聴が楽しむことが可能です。
音量を上げずに高い没入感が得られるため、耳にも優しく音楽を楽しむのに最適な技術といえるでしょう。
歴史
ノイズキャンセリングは当初、騒音が激しい航空機用ヘッドセットとして、BOSEが開発しました。
歴史は非常に長いものの、SONYが民生用で、デジタルノイズキャンセリングのヘッドホンを発売したのが2008年。
そこから12年でどんどん技術的に進化していき、筐体の小さい完全ワイヤレスイヤホンに格安で搭載されるようになり、2020年には10,000円未満のモデルでも搭載されるようになってます。
- 1978年:アマー・G・ボーズ博士が発案
- 1989年:BOSEが航空機のヘッドセットに搭載
- 1994年:TOAが消音スピーカーの実用化
- 2000年:BOSEが世界初ノイズキャンセリングヘッドホンQuietComfortを発売
- 2008年:SONYが世界初デジタルノイズキャンセリングヘッドホンMDR-NC500Dを発売
「ノイズキャンセリング」の仕組み
音には上記画像のように周波数の波があります。
「ノイズキャンセリング」では音を消すため、騒音などの音の周波数とは、逆の波形を持った音を当てることで消す仕組です。
具体的にはイヤホンやヘッドホンの内側や外側にマイク搭載した騒音を拾い、逆位相の音をDSPで生成し、スピーカーで音楽に被せて流すことで、騒音のみをクリアにしています。
足し算で10に-10を足したら0になるように、正確に逆位相の音を発生させるのが重要なポイントです。
高音に弱い理由
万能に感じる「ノイズキャンセリング」ですが、高音が多い騒音を軽減するのは得意ではありません。
というのも、音の周波数の波は低音と高音では大きく異なり、上記の画像の用に高音ほど波形が細かくなるため、逆位相の音を作り出す処理が間に合わなくなってしまうためです。
実際、「ノイズキャンセリング」を使ってみると換気扇や航空機の低い音はかなり消してくれますが、人の声や食器の当たる音などは殆ど消えません。
そのため、高音部分は最も性能の差が出る部分であり、性能の高いモデルでもそれほど期待しないほうが良いでしょう。
「ノイズキャンセリング」の種類
「ノイズキャンセリング」といっても、種類が有り、大きく分けるとここまで説明したデジタル処理による「アクティブノイズキャンセリング」と遮音性を高めることで音と侵入を抑える「パッシブノイズキャンセリング」に分類可能です。
また、「アクティブノイズキャンセリング」の中でもマイクの位置の違いから、フィードフォワード方式とフィードバック方式に分けられます。
- 遮音性を高める「パッシブノイズキャンセリング」
- 逆位相の音で騒音を打ち消す「アクティブノイズキャンセリング」
また、「アクティブノイズキャンセリング」の中でもマイクの位置の違いから、フィードフォワード方式とフィードバック方式に分けられます。
遮音性を高める「パッシブノイズキャンセリング」
ヘッドホンのイヤーパッドやイヤホンのイヤーチップなどの素材や形状で、遮音性を高め音の侵入を防ぐのが「パッシブノイズキャンセリング」です。
イヤーパッドやイヤーチップでは、質量が低く低音は殆ど防げないものの、高音に対しては有効で、「アクティブノイズキャンセリング」の苦手な高音部分を補完するという部分でもかなり重要。
実際、カナル型のイヤホンなどを利用したことある人は、インナーイヤー型イヤホンより遮音性の高さと実感したことがあると人も多いのではないでしょうか。
そのため、基本的に「アクティブノイズキャンセリング」は「パッシブノイズキャンセリング」と組み合わせることで高い効果を発揮するといえるでしょう。
逆位相の音で騒音を打ち消す「アクティブノイズキャンセリング(ANC)」
周囲の騒音と逆の波形を持つ音を生成し、音をぶつけることで騒音を打ち消す「アクティブノイズキャンセリング」は、騒音を疲労マイクの位置により以下の2つの方式に分けられます。
- イヤホン外側のマイクで騒音を拾う「フィードフォワード方式」
- イヤホン内側のマイクで騒音を拾う「フィードバック方式」
また、フィードフォワードとフィードバック対応したタイプを「ハイブリッド方式」と呼びます。
フィードフォワード方式
ヘッドホンやイヤホンの外側に、騒音を拾うマイクを搭載し、逆位相の音を音楽の再生に合わせて発生させるのがフィードフォワード方式。
効果はフィードバック方式に劣ると言われるものの、構造がシンプルな分安価に搭載できるため、廉価モデルに採用されるケースが多いです。
フィードバック方式
ヘッドホンやイヤホンの内側にマイクを搭載し、騒音と再生している音楽に逆位相を当てるのがフィードバック方式。
内側にマイクがあるため、耳に近くより高い精度で逆位相の音を作り出せるため、フィードフォワード方式より高い効果を期待できます。
ハイブリッド方式
フィードフォワード方式とハイブリッド方式の両方を採用したのがハイブリッド方式。
当然、効果は最も高いため、最近の完全ワイヤレスイヤホンでは殆どがハイブリッド方式を採用しています。
「ノイズキャンセリング」の危険性
音楽を視聴するのは楽しいですが、大音量で長時間の音楽の視聴は難聴のリスクが高まります。
しかし、「ノイズキャンセリング」を利用することで大音量にしなくても、騒音を打ち消してくれるため、高い没入感を得えられることから音量を下げても快適に音楽を楽しむことが可能です。
そういう意味では危険性は軽減されるのですが、問題は外出時の利用。
性能の高い「ノイズキャンセリング」では、車の音など外部の騒音もある程度打ち消してくれるため、再生している音楽と合わせると外部の状況が音では判断できなくなる危険性があります。
そのため、横断歩道はもちろん、ガードレールのない歩道では、横や後ろからきた自動車に気づきにくいため、屋外での利用は意識的に注意を引き上げましょう。
「ノイズキャンセリング」まとめ
没入感が圧倒的に高まり音楽の視聴をより楽しくしてくれる「ノイズキャンセリング」。
マイクで騒音を拾い、スピーカーで逆位相の音を流すという仕組みから、外音取り込み機能などの便利な機能も多くの場合利用できるため、カナル型の完全ワイヤレスイヤホンとの相性も非常に高いです。
完全ワイヤレスイヤホンでは、「ノイズキャンセリング」を使うと連続再生時間が短くなるなどの欠点もあるものの、そもそも再生時間が大幅に伸びてきているので、今後更に人気となっていくでしょう!