今最も勢いのあるガジェット1つが完全ワイヤレスイヤホン。
元々、音質や安定性などの欠点も多い製品でしたが、人気に伴い新技術がどんどん投入され完成度が高まっています。
中でも期待値の高い新技術は、Bluetoothで左右それぞれ音楽データ伝送する左右同時伝送でしょう。
ということで、今回は、左右同時伝送を可能にするQualcommの「TWS Plus」を徹底解説していきます。
TWSについては[TWSとは?]を御覧くださいませ!
実際に使ってレビューしたモデルの中から抽出しています。
「TWS Plus」とは?
「TWS Plus」は、TrueWireless Stereo Plusの略で、スマホ向けSoCで有名なQualcommの左右同時伝送を実現する規格です。
従来の完全ワイヤレスイヤホンが、スマホなどの発信デバイスから伝送されたデータを片側で受信し、そこからもう一方に伝送しているため、片側のイヤホンのバッテリーの消費が激しいことや帯域的にも負担がかかっていました。
しかし、「TWS Plus」では、発信デバイスからデータを伝送する時点で、左右それぞれへ個別実現!
そのため、片側のイヤホンだけバッテリーを消費するなどの欠点を克服した技術です。
また、Qualcomm製チップセット専用の低遅延コーデックである、「aptX」や「aptX Adaptive」などと組み合わせることで高音質と安定性を可能にしています。
- Qualcommの規格
- 左右同時伝送規格
- 専用チップが必要
- 安定性の向上
「TWS Plus」のメリット
従来のリレー伝送方式と比べて「TWS Plus」の大きなメリットは以下の4つです。
- 左右どちらの片耳でも利用可能
- 片方のイヤホンの負担が減ることで連続再生時間の改善
- 発信デバイスと左右どちらも直接接続するによる安定性の向上
- ハブを挟まないため遅延の改善
リレー伝送ではスマホ→親機→子機で伝送していたため、親機のバッテリー負担が大きく、子機側への伝送も遠回りなので、遅延も発生しやすい仕組みです。
また、スマホ→親機間で全てのデータを伝送しているため、高いビットレートでは帯域の不足などなどから通信の安定性も欠けていましたが、「TWS Plus」で左右均等に通信することで、今まで完全ワイヤレスイヤホンが抱えていた問題の多くが改善されます。
「TWS Plus」の欠点
従来のリレー伝送と比べて多くのメリットがある「TWS Plus」。
一見完璧に見える規格ですが、2つの大きな欠点があります。
- イヤホン側でQualcomm製チップが必須
- スマホなどの発信側のデバイスでもQualcomm製チップが必須
「TWS Plus」は、左右同時伝送の規格とはいえ、Bluetoothなどのオープン仕様の規格と異なり、Qualcomm専用規格のため、他社製のチップセットでは利用不可。
また、最も重大な問題は、スマホ側もQualcomm製のチップセットを採用している必要があるため、iPhoneはもちろん、MediaTekやExynos、Kirinなどのチップを搭載するAndroidスマホも利用することはできません。
そのため、「TWS Plus」は優れた技術ではあるものの利用するまでのハードルが高いことが最大の欠点といえるでしょう。
「TWS Plus」と「MCSync」の違い
大きなメリットを生み出す左右同時伝送技術は、Qualcommの「TWS Plus」以外にも、無線半導体メーカーAIROHAの「MCSync」があります。
この2つの規格の大きな違いは、「TWS Plus」が左右それぞれ個別に受発信するところ、「MCSync」では右側の伝送から左側のイヤホンが傍受することで左右同時伝送を実現。
そのため「MCSync」は「TWS Plus」と違い、イヤホン部分で技術が完結しており、発信側のデバイスに依存せずに左右同時伝送が可能です。
「TWS Plus」と「Qualcomm TrueWireless Mirroring」の違い
Qualcommのハードに依存しない左右同時伝送の新技術が「Qualcomm TrueWireless Mirroring」。
発信デバイス側の成約がないことで人気のAIROHAの「AB1532」や「AB1536U」などのチップで利用できる「MCSync」と同様、傍受方式を採用することで欠点を回避しています。
また、「TWS Plus」では左右それぞれ認識していましたが、左右ワンセットで表示されてシームレスに左右の切り替えが可能です。
「TWS Plus」対応イヤホン
「TWS Plus」に対応したイヤホンの以下のチップセットを搭載している必要があります。
- QCC512Xシリーズ
- QCC302Xシリーズ[QCC3020&QCC3026]
- QCC514Xシリーズ
- QCC304Xシリーズ
ANCまで対応する「QCC512Xシリーズ」
「QCC512Xシリーズ」は、Qualcommのハイエンドモデル向けのチップセットです。
そのため、「TWS Plus」はもちろん、可変ビットレートを可能にする「aptX Adaptive」や「ハイブリッドノイズキャンセリング」対応。
その中でも「QCC5124」と「QCC5126」がイヤホンで採用されており、対応イヤホンは下記になります。
廉価モデル向けの「QCC3020&QCC3026」
QCC302Xシリーズは、ローエンドからミドルレンジのチップセットです。
「QCC3020」や「QCC3026」が主に完全ワイヤレスイヤホン向けで利用されるチップで、価格的には5,000~10,000円程度のモデルに採用されます。
安定度では「QCC3026」の方が上とされているため、人混みや通信環境が悪い場所で利用する機会が多い人は、「QCC3026」採用もイヤホンを選んだ方が良いでしょう。
実際「TWS Plus」を試した感想は[ヤマハ「TW-E3A」レビュー!!]を御覧くださいませ!
Qualcomm TrueWireless Mirroring対応の「QCC514X&QCC304Xシリーズ」
Qualcommの最新シリーズの「QCC514X&QCC304Xシリーズ」は、TrueWireless Mirroring対応。
ローエンドやミドルレンジに対応する「QCC304Xシリーズ」でも、「aptX Adaptive」や「ハイブリッドノイズキャンセリング」に対応に加えBluetoothも5.2もで対応しています。
まだ、登場から日が浅いため採用している完全ワイヤレスイヤホン少ないものの、既にAVIOTや「SOUNDPEATS Sonic」などのコスパの高いモデルも出ているため、イヤホン向けチップセットとしては、最もおすすめです。
「TWS Plus」対応のスマートフォン
イヤホン側では「TWS Plus」対応チップを採用していればOKでしたが、スマホ側は明確な基準がなく対応スマホを探すのは、難しいの一言。
というのも、当初Snapdragon845搭載の場合メーカーのアップデートで、Snapdoragon855以降は標準対応と思われていましたが、メーカーにより対応が異なるうえ、Snapdragon720G搭載スマホでも対応していたり、判断材料がなくなっています。
また、メーカーのスペック上にも記載がないので、調べるのは困難となっており、「TWS Plus」を利用するためのハードルは非常に高いです。
私の持っている機種やネット上の情報を集めると下記の機種が「TWS Plus」に対応していますが、その他のスマホで対応モデルを探す場合、個別に検索したりデモ機で確認するしかないでしょう。
- Xperia 1
- Xperia 5
- AQUOS R3
- Xiaomi Redmi Note 9S
「TWS Plus」のまとめ
通信の安定性、遅延、連続再生時間の改善と従来のリレー方式の欠点を克服している「TWS Plus」。
技術的には素晴らしいものの、イヤホン単体では利用することができず、スマホ側の対応も基準がなく、利用するまでのハードルが高すぎる欠点があります。
Qualcomm側も認識しているようで、TrueWireless Mirroringでは傍受方式の左右同時伝送を実現しているため「MCSync」のように一気に普及していきそうです。