高級機と廉価機での価格差同様、音質にも差が出ることの多いイヤホンやヘッドホン。
親指程度の小さい構造のイヤホンでも音質に差が出ます。
その音質に大きく関わる「音源」「Bluetoothコーデック」「周波数特性」と並び重要な要素の一つが音を再生する「ドライバー」です。
ということで、今回は音質に大きく影響するイヤホンのドライバーユニットの種類毎の特徴を解説していきます。
Bluetoothのコーデックを知りたい人は[Bluetoothのコーデックの音質と確認方法を徹底解説!!]をご覧くださいませ。
実際に使ってレビューしたモデルの中から抽出しています。
イヤホンのドライバーユニットとは?
「ドライバーユニット」は、イヤホンの音を鳴らすスピーカー部分のことを指します。
音質を決定づける要素には、
- 「音源」
- 「コーデック」
- 「周波数特性」
- 「アンプ」
など複数の要素がありますが、「ドライバーユニット」はその中でも重要性が高い部分の一つ。
というのも、「ドライバーユニット」は、デジタル信号の音源をアナログ信号にコンバートし、アンプで増幅したデータを音として再生機構であり、ユーザーが直接音を感じる部分だからです。
そのため、ドライバーユニット毎の傾向を把握することで、自分の好みの音を表現してくれるイヤホンを見つけられる可能性を引き上げられます。
イヤホンのドライバーユニットの種類
ドライバーユニットには、以下の4種類があります。
- 「ダイナミック型」
- 「バランスド・アーマチェア(BA型)」
- 「ハイブリッド型」
- 「コンデンサー型」
完璧なものはなくそれぞれ得手不得手があるので特徴を交えて解説していきます。
低コストで低音が強い「ダイナミック型」
「ダイナミック型」は、構造が単純で低コストでの製造に向いています。
そのため、低価格帯のイヤホンやヘッドホンに採用されるケースが多く世の中に広く普及しています。
低価格で採用されることが多いと聞くと、音質が悪そうではありますが、メーカーのノウハウや作り込み次第なので一概に悪いとは言えません。
また、構造上低音を響かせるのが得意なドライバーのため、高音の響きが良くない傾向にあります。
そのぶん、低音は他のドライバーと比べてもしっかり出るのでEDM系の音楽を好む人にはしっくりと来るでしょう!
- 構造が単純で低コスト
- 低音の表現力が良い
- 高音域の表現力が苦手
高い解像度と高音が得意な「バランスドアーマチェア(BA型)」
「バランスドアーマチェア(BA型)」は、構造は複雑になるものの小型化しやすく耳栓タイプのカナル型イヤホンに採用されるケースが多いです。
また、小型の分音域が狭くなりがちではあるものの、解像感が高く、高音域を得意としています。
また、小型化しやすいことを活かし高音、中音、低音などそれぞれ分けて搭載するマルチドライバー的な使い方もされるので、ミドルレンジからハイエンドクラスのイヤホンに搭載されるケースが目立ちます。
- 構造はやや複雑で高単価
- 小型のためマルチドライバー向き
- 高音域と解像感の表現力が高い
- 低音域に表現は弱い
良いとこ取りの「ハイブリッド型」
「ハイブリッド」は、「ダイナミック型」と「バランスドアーマチェア(BA型)」を最低1基ずつ搭載したイヤホンを指します。
構造的に低音が得意な「ダイナミック型」と高解像度で高音域に強い「バランスドアーマチェア(BA型)」をそれぞれ搭載することでバランスに優れた高い解像感とパワフルさを両立できます。
しかし、仕組み上必ず2基以上ドライバーを用意する必要があるため、低価格イヤホンでは殆ど採用事例はありません。
- 2基以上が必要なため高コスト
- 低音~高音域まで高い表現力が可能
- 調整が上手くないとバラツキがでる
ハイブリッドドライバー搭載のイヤホンは[radius「HP-V700BT」レビュー!!]をご覧くださいませ。
広い周波数数帯域で高い再現性を誇る「コンデンサー型」
「コンデンサー型」は、音質だけでいえばここまで紹介したドライバの中でも最も広い周波数帯域と高い再現性を誇ります。
というのも、他のドライバーとは構造が大きく異なり、磁気でダイアフラム(振動板)振動させるのではなく、帯電した板で振動させることで音を増幅させます。
そのため、超極薄のダイアフラム(振動板)を使うことができ、磁気も必要ないので軽量化が容易で質量が軽く、レスポンスと解像感の高い音質を実現可能です。
しかし、冒頭で説明したように完璧なドライバはありません。
「コンデンサー型」の場合、電圧を使うため強力なアンプが必要になり、大音量を苦手としています。
モバイルデバイスとしては、別途アンプが必要となると大きな欠点であり採用イヤホンやヘッドホンは全体からみると極わずか。
とはいえ、持ち運びや使い勝手より音質を重視するといった人には最適なドライバーといえるでしょう。
- 技術力が必要で高コスト
- 忠実な表現力でドライバー最高レベルの音質
- 別途アンプが必要
イヤホンのドライバーユニットのメーカー
ドライバーユニットの多くはイヤホンメーカーが独自で作っていると思われがちですが、専用のドライバーメーカーのものを採用していることが多いです。
逆に独自のドライバーユニットで有名なメーカーをあげると完全ワイヤレスイヤホンで人気のあるSONYぐらいでしょう。
それでは、大手ドライバーメーカーの紹介をしていきます。
ダイナミックドライバー特化の「Dynamic Motion」
「Dynamic Motion」は、1982年設立の韓国に本社を置く、ドライバーユニット製造メーカー。
「ダイナミック型」のドライバーユニットに注力し、Samsungなどからも採用されています。
近年は、OEM生産からの脱却を図り独自ブランドのイヤホンを発売するなど精力的に拡大しています。
BA型中心にダイナミック型も提供する「Knowles」
「Knowles」は、1946年設立したアメリカに本部を置く半導体や音声関連の電子分品を開発販売するメーカーです。
「バランスドアーマチェア(BA型)」のドライバーユニットを中心に「ダイナミック型」も開発するなどドライバーを幅広く開発。
また、イヤホンなどのドライバーユニットだけでなく音声認識用のプロセッサやマイクを開発することで、スマートホームを含むIoT分野やにも部品を供給しています。
BA型ドライバー特化の「Sonion」
「Sonion」は、デンマークに1974年設立した補聴器メーカー。
元々は「バランスドアーマチェア(BA型)」の補聴器専門のメーカーではあったものの、小型で高い解像度と高音に強い特性を活かしイヤホンのドライバーユニットにも参入し、多くのメーカーに採用されています。
イヤホンのドライバーユニットまとめ
イヤホンのドライバーユニットは、「ダイナミック型」と「バランスドアーマチェア(BA型)」、両方合わせた「ハイブリッド型」が殆どです。
音質に大きく影響するだけにユニット毎の特性と組合わなども意識することで好みの音質に近いイヤホンを探す助けになるでしょう。
とはいえ、イヤホンは奥が深いし、組み合わせの要素が多く音質に拘るとジプシーすることになるのである程度妥協も必要かもしれません。