以前に、[キーボードの選び方とおすすめ10選!!]の記事では、キーボード全体の種類や選び方について解説しました。
その中でもメカニカルキーボードは、多岐にわたる打鍵感や打鍵音の違いなど異なる特徴があり、各社から色んな特徴のメカニカルキーボードが出てきているので把握出来ている人も少ないでしょう。
とうことで、今回キーボードの中でも特に特徴のあるメカニカルキーボードにスポットライトをあてて徹底解説していきます。
メカニカルキーボードとは?
そもそもメカニカルキーボードは、メンブレンやパンタグラフキーボードと構造が大きく異なり軸と言われるキースイッチが独立して成り立っています。
そして、軸メーカーとして最も有名なのはCherry社で、軸の特徴毎に色で区分けされていおり、[赤軸、茶軸、青軸、黒軸]などのメジャーな物から[ピンク軸]や[シルバー軸]などの特殊なキースイッチもあり、多くの選択肢から選ぶことが可能です。
そのため、メンブレンやパンタグラフキーボードと比べるとコストが高く、パンタグラフの様な薄型にできないなどの短所もあります。
しかし、耐久性が高く底打ちをしないタイピングなど、上質な打鍵感を得られるメリットも有り一度使うと抜けられないキーボードです。
ちなみに私は、kailh軸ロープロファイルの青軸を採用した、HAVIT「HV KB395L JP」をメインに使っている状態で、メンブレンやパンタグラフのキーボードを複数試しましたが未だにこの使用感を超える物は出てきていません。
- キースイッチが独立して成り立っている
- 多くの種類の軸がある
- メンブレンやパンタグラフキーボードよりも高価な物が多い
- パンタグラフの様に薄型には出来ない
- 耐久性は高く上質な打鍵感を得られる
「HV KB395L JP」のレビューについてはこちらをご参照くださいませ。
メカニカルキーボードの仕組み
メンブレンキーボードやパンタグラフは複数のシートが重なった物の上にラバードームを設置した仕組みになっており、キーを押すと上のシートが下のシートに触れる事で接点を作りキー入力の信号を送る構造となっています。
一方、メカニカルキーボードの場合は軸内部に接点があるため、独立してキー入力の信号を送る仕組みです。
軸の内部構造は、一部を省くと殆どが内部に接点となる板バネと、反発力を出すための金属製のバネスプリングが採用されています。
そのため、製造メーカーによってクリック感や反発力に違いがあるので、好みの軸を探す事はメカニカルキーボードを使う上で楽しみの一つであるといえるでしょう。
メカニカルキーボード軸の種類
キースイッチの軸には有名なCherry社以外にも、マウスで有名なロジクール、ゲーム系デバイスのRazerやSteelSeries、中国のkailhなどがメカニカルキーボードの軸を販売しているため種類が豊富です。
また、基本的には各社軸の種類によって色が分けられていますが、メーカーが違うと「キーストローク」や「アクチュエーションポイント」が同じ色でも異なり、当然打鍵感や打鍵音に違いも出るので、メーカーごとに特徴をまとめていきます。
CHERRYの主要キースイッチ
Cherry社は、ドイツを本社に置くパソコンなどの周辺機器メーカーで、「Cherry MX」のブランド名で長年メカニカルキーボードのキースイッチを販売する超老舗メーカーです。
そんなCherry社が、販売している主なキースイッチとその特徴が下記の表になります。
名称 | 赤軸 | 茶軸 | 青軸 | 黒軸 | ピンク軸 | 銀軸 | 薄型赤軸 |
キーストローク | 4.0mm | 4.0mm | 4.0mm | 4.0mm | 3.7mm | 3.5mm | 3.2mm |
アクチュエーションポイント | 2.0mm | 2.0mm | 2.2mm | 2.0mm | 1.9mm | 1.2mm | 1.2mm |
スイッチ感 | リニア | タクタイル | クリック | リニア | リニア | リニア | リニア |
押下圧 | 45g ±15g | 55g ±25g | 60g ±15g | 60g ±20g | 45g ±15g | 45g ±15g | 45g ±15g |
耐久性 | 5,000万回 | 5,000万回 | 5,000万回 | 5,000万回 | 5,000万回 | 5,000万回 | 5,000万回 |
打鍵感については後述しますが、打鍵音については静音設計の「ピンク軸」と特殊なクリック音が響く「青軸」を除けば基本的には大きな差はありません。
また、一般的にはメカニカルキーボードはうるさいと思われがちですが、「青軸」の打鍵音のイメージがメカニカル全体にイメージになっているだけであり、最も多く使われているメンブレンキーボードと比べると音量はやや小さい傾向があります。
CHERRY MX Red[赤軸]
赤軸は、軸の中でも最もオーソドックスなタイプ。
打鍵感は、キースイッチを下げる毎にリニアに重くなるため自然にタイピングが可能です。
また、押下圧も45gと比較的軽めなのでタイピング量が多い人に向いています。
CHERRY MX Brown[茶軸]
茶軸は、赤軸に比べ少し重い打鍵感とタクタイルと呼ばれる弱めのクリック感が特徴。
青軸のような強力なクリック感のある打鍵感は苦手だけど底打ちしない練習がしたい人などには最適です。
CHERRY MX Blue[青軸]
メカニカルキーボードといえば、最も有名で特徴が強いのが青軸です。
青軸は強力なクリック感のある重みと「カチッ」とした打鍵音を持っています。
そのため、好みが非常に分かれますが、クリック感と「カチッ」という音にハマれば唯一無二のキーボードになるでしょう。
CHERRY MX Black[黒軸]
黒軸は赤軸の打鍵感を重くしたのが特徴です。
押下圧が重いのと同時にキーの戻りも早いので、比較的高速タイピングに向いています。
ただし、押下圧が重いため軽いタッチでのタイピングがしにくく、長時間のタイピングでは疲れがでます。
CHERRY MX Silent[ピンク軸]
ピンク軸は、赤軸の静音タイプ。
そのため、職場や人がいる場所で使用に最適です。
キーストロークやアクチュエーションポイントが赤軸に比べて若干浅くなっているため、より軽いタッチでタイピング可能です。
CHERRY MX Speed[銀軸]
銀軸は正式には、Speed軸と呼ばれ高速タイピングに適したキースイッチです。
具体的には、他の軸に比べてキーストロークやアクチュエーションポイントを大幅に浅く、押下圧も45gと軽くすることで、物理的にも感覚的にも高速で入力可能となっています。
CHERRY MX LowProfile Red[薄型赤軸]
ロープロファイルの赤軸は、いわゆる背低タイプのメカニカルキーボードで赤軸などの通常のキーストロークに比べて非常に浅いキーストロークを誇ります。
また、キーストロークの薄さを生かしてスタイリッシュな薄型のキーボードを作ることが可能です。
そのため、パンタグラフなどの浅いキーストローク慣れた人にも違和感なく利用できるキースイッチになっています。
とはいえ、パンタグラフなどに比べるとキーストロークも長くキーボードとしてもパンタグラフ並みには薄くはできません。
CHERRYのマイナー軸
Cherry MXの中には上記の軸以外に殆ど使われませんが、以下の4つのキースイッチがあります。
下記の4つの軸は、特性がかなりピーキーなこともあり、市販のメカニカルキーボードで採用されることはまれなので、概要だけ紹介します。
CHERRY MX 白軸
白軸は、黒軸以上の押下圧に加え、青軸と茶軸の間程度のクリック感があるキースイッチです。
CHERRY クリア軸
クリア軸は、黒軸並の押下圧に茶軸のタクタイル感のクリックを再現した軸で名前の通り淡色の軸です。
CHERRY グレー軸
グレー軸は、クリア軸と同様のタクタイル感と押下圧を更に高めたモデルで一般向けのキーボードで採用されているケースはまずありません。
正直めちゃくちゃ重いです。
CHERRY MX ダークグレー軸
ダークグレー軸は、グレー軸のタクタイルタイプからリニアタイプに変更したキースイッチです。こちらの軸も特性が強すぎて一部のユーザーにしか向かないため一般向けではありません。
ロジクールの主要キースイッチ
ロジクールは、マウスの性能の高さで有名ですが、キーボードにもかなり力を入れていてメンブレンやパンタグラフのキーボードでも多数のコンセプトの商品を開発。
また、メカニカルキーボードでは、自社製のオリジナル軸(キースイッチ)を開発するなどキーボード界でもトップクラスに君臨しています。
名称 | ROMER-Gタクタイル | ROMER-Gリニア | GX青軸 |
キーストローク | 3.2mm | 3.2mm | 4.0mm |
アクチュエーションポイント | 1.5mm | 1.5mm | 1.9mm |
スイッチ感 | タクタイル | リニア | クリック |
押下圧 | 45g | 45g | 50g |
耐久性 | 7,000万回 | 7,000万回 | 7,000万回 |
Cherry軸に比べると比較的耐久性が高く、キーストロークやアクチュエーションポイントが浅くなっているのが、ロジクール製キースイッチの特徴です。
そのため、Cherry製の軸に比べると全体的に高速タイピングに向いた仕様となっています。
ROMER-Gタクタイル
ROMER-Gタクタイルは、Cherry軸でいう茶軸タイプのキースイッチで、Cherry軸に比べるとキーストロークが短くアクチュエーションポイントも浅いです。
そのため、打鍵感としては茶軸より軽いタイピングが可能となっている為、打ち心地は流れる様な打鍵感となります。
ROMER-Gリニア
ROMER-Gリニアは、Cherry製のMX LowProfile Redに非常に近く打鍵音も比較的抑えられています。
GX青軸
GX青軸は、Cherry製の青軸と同等の打鍵感となっており、打鍵音もしっかり「カチッ」と鳴るので分かる人でない場合は見極めるのは難しいでしょう。
そのため、ROMER-Gリニア同様よほどCherry製に拘りがなければ選択肢としてアクチュエーションポイントが浅い分Cherry製の軸よりおすすめです。
Razerの主要キースイッチ
Razerはゲーム系デバイスメーカーとして超有名。
そのためキーボードでも他社製の軸を使うだけでなく、しっかりオリジナルのキースイッチを開発しています。
名称 | Razer Green Switch | Razer Orange Switch |
Razer Yellow Switch
|
Razer Clicky Optical Switch
|
Razer linear Optical Switch
|
キーストローク | 4.0mm | 4.0mm | 3.5mm | 3.5mm | 3.5mm |
アクチュエーションポイント | 1.9mm | 1.9mm | 1.2mm | 1.5mm | 1.0mm |
スイッチ感 | クリックタイプ | タクタイル | リニア | タクタイル | リニア |
押下圧 | 50g | 45g | 45g | 45g | 40g |
Razerのキースイッチは、かなりCherry製を意識した作りとなっているのがスペックからもわかりますね。
Razer Green Switch
通称、緑軸と呼ばれるRazer Green Switchは、殆どCherry製青軸と同じです。
実際の触ってみるとスペックとは異なり打鍵感では緑軸のほうがやや重いですが、青軸に慣れた人であれば感覚的にも問題なく利用可能。
Razer Orange Switch
こちらは通称、オレンジ軸と呼ばれCherry製のキースイッチでいうところの茶軸に相当します。
オリジナルではあるものの特性は茶軸に非常に近い軸です。
Razer Yellow Switch
Razerのイエロー軸は、Cherry製の銀軸に相当する高速タイピングに適したキースイッチです。
スペック的にも、キーストロークやアクチュエーションポイント、押下圧まで同じなのでCherry製の銀軸からの乗り換えは違和感を感じず利用できるでしょう。
Razer Clicky Optical Switch
Razerのクリッキーオプティカルスイッチは、押下圧45g、キーストローク3.5mmとかなりロープロファイルよりな作りに加え、機械的にアクチュエーションポイントがあるキーボードと異なり、光の反応を利用したキースイッチとなっています。
そのため、多くのメカニカルキーボードに対して圧倒的に高い応答性と1億回の耐久性を誇ります。
物理的な接点がないという意味ではメカニカルキーボードより静電容量無接点方式に近く別次元に優れた性能といえるでしょう。
Razer linear Optical Switch
Razerのリニアオプティカルスイッチは、クリッキータイプに対して更に軽い40gの押下圧と1.0mmとめちゃくちゃ浅いアクチュエーションポイントを実現しているので、軽さと反応の速さから高速タイピングに最も優れたキーボードと言っても過言ではありません。
SteelSeriesの主要キースイッチ
SteelSeriesもレーザーと同様ゲーミングデバイスメーカーで独自のキースイッチを開発しています。
名称 | QX1 | QX2 | QS1 |
キーストローク | 4.0mm | 4.0mm | 3.0mm |
アクチュエーションポイント | 2.0mm | 2.0mm | 1.5mm |
スイッチ感 | リニア | リニア | リニア |
押下圧 | 45g | 45g | 45g |
耐久性 | 5,000万回 | 5,000万回 | 6,000万回 |
SteelSeriesの軸は、全てリニアで押下圧が低いタイプが特徴です。
QX1
QX1は、Cherry製の赤軸と殆ど同じタイプの物なので打鍵感などに大きな違いはありません。
QX2
QX2は、QX1同様のキースイッチで軸の部分が透明になっているのが特徴です。
そのため、ゲーミングキーボードなどのLEDライトとの相性は非常に良く適しています。
QS1
QS1は、Cherry製の通称銀軸に近いタイプのキースイッチです。
銀軸と比べるとキーストロークが短く、アクチュエーションポイントが深めになっているので高速タイピングはアクチュエーションポイントが深い分銀軸には劣るでしょう。
とはいえ、完全にロープロファイルモデルですのでこちらのほうが感覚的に速くタイピングできる可能性があります。
kailhの主要キースイッチ
kailhは、中国のキースイッチメーカーでRazerなどのキースイッチも製造するなど実績のあるメーカーです。
一般的に日本で出回っているキースイッチでは、ロープロファイルモデルの物が有名で、私がメインで愛用しているHAVITの「HV KB395L JP」やサンワサプライの「400-SKB056R」にkailhのキースイッチを採用されています。
名称 | ロープロファイル赤軸 | ロープロファイル青軸 |
キーストローク | 3.0mm | 3.0mm |
アクチュエーションポイント | 1.4mm | 1.4mm |
スイッチ感 | リニア | クリック |
押下圧 | 45g | 55g |
耐久性 | 5,000万回 | 5,000万回 |
kailhのキースイッチの正式な名称は、不明ながらロープロファイルでアクチュエーションポイントも低いためかなり高速タイピング向きです。
ロープロファイル赤軸
Cherry製のロープロファイル赤軸と近いスペックで打鍵感も比較的近いのですが、キーストロークが短いため感覚的には、Cherry製より軽い打鍵感です。
ロープロファイル青軸
青軸は、Cherry製の青軸と比べると比較的に打鍵音は抑えめで打鍵感もスペック上の押下圧より軽めに感じるように作られています。
メカニカルキーボードの好みの傾向
一口にメカニカルキーボードといっても、打鍵感や打鍵音などの使用感はキースイッチにより大きく異なり、選択肢が多く好みにあったキーボードを選びやすい反面、特性をしっかり把握しないと逆に迷ってしまうことも考えられます。
そのため、自分の好みや用途の把握、それ以上に自分のタイピング時の感覚を理解することが重要で、特に初めてメカニカルキーボードを買う際は目安を把握する必要があるでしょう。
好みの傾向を把握する手段として、メカニカルキーボードの各種スイッチなどをまとめたキーボードテスターなどがAmazonで販売されているので、購入するのをおすすめします!
キースイッチ別に向いているタイプの特性をまとめると下記のようになるので参考になれば幸いです。
- 赤軸→長時間のタイピングをする人
- 茶軸→タイピング時に緩めのクリック感が欲しい人
- 青軸→強めのクリック感やなにより[カチッ]とした打鍵音が好きな人
- 黒軸→指先に強めの感覚が欲しい人で長時間タイピングをしない人
- ピンク軸→職場や静かな静音タイプのキーボードが好きな人
- 銀軸→高速タイピングや長時間のタイピングをする人
メカニカルキーボードの軸と種類まとめ
メカニカルキーボードをこれから購入する人は、キースイッチの種類が多く購入までに悩む事が多くなると思います。
また、メカニカルキーボードはメンブレンやパンタグラフに比べて高価な物が多いので自分にあったキーボードを見つけるまで買い続けるのも大変です。
とはいえ、一度メカニカルキーボードに慣れてしまうとメンブレンやパンタグラフには戻れないぐらい上質な打鍵感を味わえるため、各キースイッチの特徴と自分の利用用途をしっかりと認識して自分にあったキーボードを選択しましょう!